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はじめに
歩行運動の基本的パタンである左右肢の,あるいは屈筋と伸筋の交代性運動は,脊髄内の神経回路によって発現すると考えられている。上位脳からの下行性効果はこれらの神経回路を起動したり,微調整したりするにすぎない。末梢からの入力も同様に,この回路の調節系として重要な役割を担っているが,歩行運動を誘発させるのに必須ではない。すなわち,脊髄の介在ニューロン回路網はそれ自身で歩行運動に必要なパタン化された指令を構成し,それを運動ニューロンに伝える。このような神経回路網を概念的にCentral Pattern Generator(CPG)と呼ぶ16,17)。
CPGの中核を構成する神経回路は,周期的に運動ニューロンを興奮させる脊髄介在ニューロン網であろう。本稿では,このCPGの基本機構であるリズム形成の脊髄内神経機構の発達について,ラットを用いた研究成果を中心に述べる。ある種のニューロンや神経回路網における律動的な発射活動は,生体の基本的な機能の一つであり,下等動物にも普遍的に認められる現象である。歩行運動の個体発生の基本機構を理解するためには,種々の動物でのリズム形成の神経機構についての幅広い系統発生学的な考察が必要であろうが,ここでは,脊椎動物の“locomotion”という観点から研究を行なっているヤツメウナギ,カエル胚,ニワトリ胚の脊髄内神経機構の解析結果を関連事項として紹介するにとどめる。
Locomotion in adult quadrupedal vertebrates, with the ventral body surface off the floor, was observed after postnatal day (P) 10 in the rat. However, interlimb coordination typical of swimming or trotting was already present even at embryonic day 20 (E20: one day before birth). Therefore, interneuronal circuits capable of producing a sustained rhythmic motor activity for locomotion, central pattern generator (CPG), has been formed at the embryonic stage in the spinal cord of the rat.
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