増大特集 生命動態システム科学
Ⅱ.数理生物学
6.組織・多細胞社会
(1)個体発生の力学の数理モデル解析
杉村 薫
1,2
,
石原 秀至
3
Sugimura Kaoru
1,2
,
Ishihara Shuji
3
1京都大学 物質-細胞統合システム拠点
2JSTさきがけ
3明治大学 理工学部物理学科 生物物理第一研究室
pp.470-471
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200044
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■機械的な力による生き物の形づくり
個体発生とは,形態形成シグナルと機械的な力の働きにより,組織が変形を繰り返すことで生き物の形が生み出される過程である。形態形成の主要なシグナル伝達経路が同定された今,“機械的な力がどのようにして生き物の形づくりを担っているのか?”,この古くて新しい問題に注目が集まっている。
多細胞組織の変形は,細胞レベルでは,① 個々の細胞形態の変化,② 細胞の移動・配置換え,③ 細胞増殖・細胞死,の三つの素過程に分解される。これらの変形はアクトミオシンの収縮力など,細胞内で分子が生成する力によって駆動される。逆に細胞や組織の変形によって力・応力の分布パターンが変化する。さらに,細胞は力を感知し,遺伝子発現や分子の局在を調節することがわかっている。このような要素と全体の循環的な相互作用による秩序形成の理解には,物理的な知見に基づいた理論解析や数値計算がしばしば有効な手だてとなる。本稿では,個体発生の力学の数理モデルの概要と具体的な研究例について紹介する。
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