ホメオステーシス入門・12
生物集団としてのホメオステーシス
畠山 一平
1
1北里大学医学部生物物理学
pp.85-88
発行日 1975年1月1日
Published Date 1975/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917171
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人類は永続するか
戦後間もない昭和26年のこと,故岡田要氏(当時,日本動物学会会頭)が動物学会例会で行った講演は,後に‘ネズミ繁栄論’としてジャーナリズムで騒がれるようになった.氏がその著“ねずみの知恵”に記しておられるところでは,例会に集まる会員の生気が薄れたことを憂い,人人を引き付けるためにされた講演であって,‘動物進化について’と題するごく通俗的な内容のものであったとのことであるが,人類の将来を暗示する独特なものであった.
氏は‘人間自身の中に自壊する因子があり,いつかは滅亡する.それならば滅亡するという前提の上で,つぎの時代の覇者たる生物は何かと考えると,それはネズミであると考えざるを得ない’と主張された.これに対し‘ネズミ繁栄否定論’が生態学者の宮地氏から出されるなど,論争を引き起こした.後に岡田氏は,ネズミの害について日本人の注意を喚起したかったのであると述べておられるが,ネズミ繁栄論は別として,‘人類永久繁栄論’が成り立つかどうかは,現実的な大問題である.
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