看護のための集団力学入門・5
集団からの離脱と分派—凝集性(2)
岡堂 哲雄
1
1聖路加看護大学
pp.1038-1044
発行日 1972年8月1日
Published Date 1972/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916407
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いわゆる人間蒸発の現象
人間蒸発ということばは,情報媒体としてのテレビが作りだした奇妙な表現である.家族や職場など身近な人に無断で家出,または失踪した人のことを,家出人といわず蒸発人間というのである.読者のほとんどが,この種のテレビ番組を一度は視聴されているだろう.家出という積極的な出発ではなく,あたかも液体または固体がその表面において気化するように,人間が所属集団から消えていくという現代的な離脱の現象を心情的に表わしたものとして,人の蒸発ということばが一般化し,多くの人に受けいれられてしまったのである.
いったい人は慣れ親しんだ集団からどうして蒸発するのだろうか.集団と個人との関係がどのように変わると,離脱しなければならないのだろうか.実際,毎週テレビの関連番組を見ていなくても,離脱の原因が多様であるのは容易に想像できることである.
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