Hello Nursing・10
時の移り
姉崎 宜子
1,2
1日赤短大
2東洋大学大学院社会学部修士課程
pp.80-82
発行日 1971年1月1日
Published Date 1971/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661915889
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□去りゆく中国人婦長□
途中1週間の中休みをはさんで4週間ずつ2度,計8週間の夜勤は1月末に終わった。12時間夜勤はつらかったが,複雑な職場の人間関係から解放され,患者や隣近所の病棟の夜勤看護婦や学生ともゆっくり話す機会がもて,少なからぬ収穫があった。夏と冬とでは,昼夜の長さが極端にちがう英国では,2月から3月になると,昼の長さが,日に日にのびていくのがわかる。季節の移り変わりとともに,私の職場にも変化がおこり始めた。
日勤に戻ると,中国人婦長になにかといやがらせをし私にも,やや意地悪く感じられたウエールス出身の医師が,ハル(Hull)という英国東海岸の漁港の町の病院の医長に栄転していった。さらに,中国人婦長が3月末,「マンチェスターは,1年間でたくさん!」という言葉を残してやめていった。職場での評判は悪かったが,私は,彼女を悪く思えなかったし,私にはことさら不親切でもなかった。彼女が病院を去る前夜,寮の彼女の部屋に別れのあいさつにいった。しばらく話して,別れぎわにマンチェスターの地図を私にくれた。彼女はマンチェスターに1年いたのに,その地図はほとんど真新しく,病院とロンドン行きの汽車が出るピカデリー駅の間だけ赤鉛筆の線がひいてあった。週末や休暇のほとんどは,同国人の友人たちがいるロンドンで過ごしたという。彼女は,病院ばかりでなく,マンチェスターの街にもとけこもうとしなかったらしい。
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