講座
食中毒
後藤 敏夫
1
1国立相模原病院
pp.61-64
発行日 1959年6月15日
Published Date 1959/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910877
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定義と分類
食中毒(Food poisoning)は食物中毒などともいわれている。もともと“食物の毒にあたる”という意味である。イギリスの学者F.B.Dewberry(1950)の定義を引用すると,広義の食中毒は“摂取された飮食物により伝播された有毒物質に起因する人間のいろいろの疾病”である。しかし,有毒物質に関する考え方は医学の進歩につれて変遷し発展してきている。1807年イタリーの中毒学者F.Selmiによつて,食中毒のうちで重要な肉中毒が蛋白腐敗の産物であるプトマインによるとされてから,プトマイン中毒は食中毒の同義語に用いられるほど広く信じられたが,その後このものはきわめて稀にしかみられないことが判明し,今日ではある種の細菌の産出する毒素とサルモネラ菌属などによる感染が重大な意義をもつものとみなされている。
さて,食中毒の分類は学者によつてかならずしも一致していないが,病因によつて次の四つに大別されるようである。すなわち,
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