東西南北
記録
角田 たかお
1
,
柳原 基
2
,
町田 一彦
3
,
四位 直毅
1早稲田大学体育局陸上競技部
2セ・リーグ記録部
3精工舎
pp.9
発行日 1969年9月1日
Published Date 1969/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914595
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人間の体力をギリギリの可能性まで確かめようとする,その意味でスポーツにおける記録の意義は重要なのかもしれない。世間の関心がそこに集中するのもまた当然なのだろう。しかし記録はあくまで結果でしかない。100mをいつ9秒台で走るかという世間の興味には,もっぱらその結果のみを切り離して,見世物的にみる傾向がなきにしもあらずなのではないか。これはたぶん100mを実際に走る者と,それを眺めている者との立場の違いがあるだろう。そして,眺める者におもねる形にスポーツがなってゆくと,どんなことをしてでも9秒台で走ることが目的になる。それがつまりプロ化するということなのだろう。見世物的興味はそれによっていっそう満たされるにしても,それは多分スポーツにおける退廃になるのだと思う。やはり自分で一度走ってみるという主体者の経験が国民スポーツの根底に必要なのではないかという気がする。
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