連載 皮膚科医と写真撮影・1【新連載】
色彩と記録
木村 俊次
1
1国家公務員等共済組合連合会立川病院皮膚科
pp.115
発行日 1992年2月1日
Published Date 1992/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412900540
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- 文献概要
皮膚科とは色彩との関わりが他のどの科よりも深い科である.内科や小児科でも黄疽の黄色や貧血の蒼白さがあるが,皮膚科で扱う変色の種類と範囲は桁違いに多い.モノクロ系では黒—灰—白色があり,カラーでは,紅色系,紫色系,黄色系,褐色系,青色系,緑色系などがあって,これらに濃淡,混在,経時的変動が加わる.皮膚面でのこうした色調変化は,他の所見とともに,診断上重要な情報となる.そしてこれを他の人に適正に伝えるためには,正確に記録(写真やスライド)にとどめておく必要がある.
また皮膚生検を行った材料は,せっかく患者さんに痛い思いをさせたので,それに見合うだけの多くの情報を取り出すべきであるが,やはり基本的には通常の切片・標本も作製しておく必要がある.この切片にHEをはじめ,免疫染色も含めた種々の染色を加えると,顕微鏡の中で,皮膚面とはまた異なったカラフルな世界が広がる.治療に直接結びつく診断に迫られていなければ,いつまで見ていても飽きないミクロの世界である.そしてこれも写真やスライドという記録に正確にとどめておくことにより,他の人への伝達が可能になる.
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