ナースの旅行記
香港の病院
吉田 みのる
1
1関東逓信病院
pp.59-61
発行日 1965年3月1日
Published Date 1965/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913530
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東京──香港3時間半
風が冷い。12月,東洋の真珠といわれる香港へ出発した。出国に当って日本の税関の手きびしいやり方にはすっかり震えあがった。
機上の人ととなりエア・ホステス嬢の説明する酸素吸入のメソード(方法)を聞く。重症患者になり切ったようだ。事故などあるはずがないと思いながら,バッグを開いて成田山のお札を認めて笑い合った。ジェット機は10分遅れて空港を飛び立った。乗客たちは,週刊誌をいっせいに窓ガラスに叩きつけ見送人に応えている。海に突き出た滑走路の所で機は一気に速力を上げ離陸する。東京湾が一望にみわたせた。ターミナル・ビルが小さい。空は碧く,雲はない。空が広すぎるせいか飛行機はまるで止まっているみたいだ。ただ,轟音が響くばかりである。
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