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思いつくまま(42) 幕末時代の紀州先覚三医人に憶う
金沢 稔
1
MINORU KANAZAWA
1
1和歌山医科大学泌尿器科学
pp.423
発行日 1965年4月1日
Published Date 1965/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491204070
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「随想」とは内容がかけ離れるが,たまに先覚者の偉業を顧ることは無言の教訓や励ましを得るものであると思うので,幕末時代の紀州の先覚医人を紹介しておこう。おくに自慢の心算ではない。華岡青洲は有名であるが,泌尿器科に関係のあることはより知られていないので一寸ふれて置く。
青洲先生は約200年前の宝歴10年(1760)紀洲那賀郡平山村に生まれ,夙に外科医を志し,自ら山野を跋渉して採取した種々の植物の効力試験のために夫人は失明するに至るという悲劇を経て,ついに蔓陀羅華を主成分とした麻酔剤を,外国で全身麻酔剤が手術に用いられたのに先立つこと40年の1805年に完成したのであり,乳癌の手術に始めて成功した。難病は全国から雲集し,又名声を慕つて教えを乞うた者は8,700人にのぼつたという記録があり,入門者のなかつたのは大隅と壱岐だけであつたとされる。
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