日本看護史の旅・7
八坂神社(京都)
石原 明
1
1横浜市大
pp.1
発行日 1966年7月1日
Published Date 1966/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912787
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夏も7月となると京の街々は祗園祭(ぎおんまつり)にわきかえる。京の舞子で名高いギオンの名の起こりはこの神社からで,京都市民は“八坂はん”とか“祗園はん”とよんでいる。祭神は天照大御神の弟スサノオノミコトとその妻クシイナダ姫,そしてその間に生まれた8人の御子ということになっているが,もともとは古代の豪族の祖神を祭り,さらに勢力争いの結果殺されたライバルの霊をなぐさめるための神社が,いつしか流行病除けの祭りになりインドや朝鮮の外来神の信仰を加えて複雑な神格になったものと考えられる。
年末の大晦日の夜,京の人々はオケラ参りにくる。これは流行病予防の効があるといわれるオケラという草の根に,神前で起こした聖火を燃やし,その火種を細縄にうけて家にもち帰る。これで元旦の雑煮を作ると1年間病気にならないと信じられ,また夏の祗園祭のヤマとホコの市中巡行は,神威によって夏季の流行病を予防するためと思われている。“蘇民将来”と書いた八角の木のお守りも社から出される。これは朝鮮から伝わった民間信仰でもある。桃山風の社殿は江戸期のものだが,南の楼門は室町期建造の文化財。境内の各所に多くの絵馬が掲げられ,背後の円山公園は桜の名所である。流行病除けの民俗信仰が年中行事と結びついた特殊な例で,看護史上も忘れられない神社である。西側の市電交差点は繁華街に面し,“石段下”は待合わせの名所。地下鉄終点河原町または京阪電車より徒歩5分。
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