アサームの旅・9
移民船で働くナースのたより—シンガポール(その2)
大嶺 千枝子
pp.68-69
発行日 1964年10月1日
Published Date 1964/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912411
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今年最後の日,みそかです。むんむんと蒸せるような暑さがつづくと,同社の他の客船のキャビンのようにエァーコンディションのないのをまったく情けなく思いながら,古い扇風機のうなりを聞きながら,友人貞子からの本「南米への旅」を読む。これは当社の南米移民の乗客(監督官)著で,これからのよい参考になる。そしてうれしかったのは,中から出た1枚の鉛筆の走り書きの手紙だった。
「千枝さん,今,幸子から電話があって,あなたの渡航を知ってびっくり,あまり急に突拍子な話しに何をどう書くべきか迷っている……」初心の信念を忘れず楽しくご無事で—と,少しまじめに咄嗟のことなので,はなむけのコトバが出ずに,困っている姿が目にみえるようである。
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