アサームの旅・8
移民船で働くナースのたより—シンガポール(その1)
大嶺 千枝子
pp.44-45
発行日 1964年8月1日
Published Date 1964/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912328
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歩を数え船の巨大さながむれば故里へ続くか積雲の波
ホンコンの沖泊に見られなかったダラグボートのみごとな案内で着岸,平べったい町である。昨夜のシンガポールの町の灯を眼前に沖泊りとなって,渡しで第一歩を踏む。食事のメンバーの呉,葉,楊はアイスクリームとミカンだけですみ,パクパクとおしゃべりを食べて,アサームも食事をするな,ということでウエイター曰く「ンー,アナタ,コレ,タクサンミルミル」彼のジェスチャーは,町に出るとご馳走がタクサンあるので,食事はこれだけでおやめなさいナ,といっている。スッカラカンの財布は何の用もたさなくなっている。カメラに変わった幾枚かの紙幣のことを考え,あわただしい出発と外国へ行くための何の知識も持ち合せていなかったための,たいへんな結果を知った。私の無一文はホンコン以来であるけれども,船内ではその必要性も感じない。だからましてや今度はマライ弗など持っていようはずもないのである。Mr N, ISAMA is very poor lady in “Fjisadasie” nowと手ぶらな自分を大袈裟にした。Mr呉曰くISAMA! you will follow me. I must contina Mr Iと葉さんは太いお腹に云々といい,葉は葉さんで楊はstrong manだといい,私は誰かの財布を頼りにしているのに,まったく情けない。
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