アサームの旅・5
移民船で働くナースのたより—寄港地 香港(その2)
大嶺 千枝子
1
1琉球政府立コザ病院
pp.92-93
発行日 1964年5月1日
Published Date 1964/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912256
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おおざっぱにして香港を去る前に私は私の歴史の一頁を喜劇的に色づけして去った1日をおしゃべりいたしましょう。きょうまでの滞在という日にドクターから特別な休日を得た。しかしいろいろの準備に船友はひとりも朝から時間がない。これまでひとりで外出することを避けたけれどもいたし方ない。スラム街のボーズのことも少しも恐ろしくなくなり,この調子だったら火事にでもなったら,タンスは愚か,ステレオ,テレビ,冷蔵庫,とにかく何でももち出し,古い点数の悪い解答用紙以外は何でも運び出すぐらいの勇気が湧いて来たので,カメラをぶらさげて渡し船に乗った。
相変わらず小波が立って,常にゆれている。しっしょに行くべぎだったYさんが行けず,自分のスケジュールがなく,少々心細くなったが,読めるはずもない英文のパンフレットと絵ハガキだけが唯一の頼りである。まだ開いてない店をぶらついて母のために茶を求めた。上質の物をみやげにと手紙を出したが,だんだんと安くなり,25ホンコン弗に落ちつく。どうやら外国の茶を何やらじょうずにだまされたように感じながら求めた。
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