連載 看護師の業務と役割の模索―厚生科研「諸外国における看護師の新たな業務と役割」から・5
シンガポールの場合
近藤 麻理
1
1前兵庫県立看護大学附置研推進センター
pp.394-398
発行日 2003年5月10日
Published Date 2003/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100837
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はじめに
シンガポールは,マレー半島の南端に位置し,人口は401万人,総面積は646km2(東京都23区とほぼ同じ)で,その人口密度は世界一である。平均寿命は78歳であり,60歳以上の人口比率は10%を超えている。
シンガポールは,1965年に独立して以来,立憲君主制のもと今日まで安定した政情を保ち,東南アジアの優等生として順調に経済発展を遂げてきた。経済成長率は1997年に9.0%であり,翌年にはアジア経済危機の余波で0.3%まで落ち込んだものの,その後はまた着実に伸びている。
シンガポールの急激な経済成長と発展の要因には,高学歴化による優秀な人材の育成と,そのために起こっている厳しい受験競争がある。しかし,高い学歴を誇るシンガポールにおいて,未だ看護教育は大学レベルに至らず,看護職は職業訓練の専門学校で養成されている。そのため,若者には看護が地位の低い職業と受け止められているのか,国内の看護職が慢性的に不足し,現在では積極的に外国から看護分野の留学生や労働者を受け入れている。
本稿では,このようなシンガポールの現状をとらえた上で,看護師の業務と役割を考えていく。
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