連載 新・ナイチンゲール伝・2
誤解されてきたその思想と人間
吉岡 修一郎
1
1久留米大学
pp.90-91
発行日 1964年5月1日
Published Date 1964/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912255
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2.生涯のデッサン(続き)
クリミヤ戦争というのは,トルコにおける宗教上の紛争をきっかけに,イギリス,フランスの連合軍がトルコに味方して,ロシアを相手に,クリミヤ半島の要塞セバストポリの攻防を中心に戦った戦争です。ロシアは皇帝ニコライⅠ世,フランスはナポレオンⅢ世,イギリスはヴィクトリア女王という時代で,ロシアとトルコはすでに前年の1853年に開戦して,トルコが負けているところへ,ロシアの南方進出を喜ばないフランスとイギリスとが参戦したというわけです。
結局は連合軍が勝ったのですが,たいへんな苦戦で,イスタンブール郊外のスクータリにおけるイギリス陸軍病院(野戦病院)へは,連日おびただしい傷病兵が送りこまれて来ました。その惨状が,どんな人間も目をおおうほどのもので,病院の設備,看護状況が粗悪・混乱をきわめていたのです。
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