医学講座
薬効と心理—プラシーボーの効果
佐久間 昭
1
1東京大学医学部
pp.51-54
発行日 1963年4月1日
Published Date 1963/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911906
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薬理学的に,まず作用がないと思われる物質を,“あたかも薬であるかのように”用いてみると,時には,ほんとうの薬と同じような作用をみることがある。この作用のない物質を,プラシーボーとか偽薬(placebo)とか呼んでいる。このような物質による治療上の効果を,真の薬の作用と区別して,プラシーボー効果と呼ぶ。
少数の例外は別として,薬を用いる時に,薬を純粋な化学物質に過ぎない,と考えている人はないだろう。薬局から買って飲む時には,その値段や,買った時の動機,すなわち,人にすすめられたり,テレビ,新聞,ラジオなどの宣伝,それに自分が病気からなおりたいという願望,その他もろもろの付属物をいっしょに飲み込んでいるのが普通である。もちろん,病院で医師から処方された場合にも,似たりよったりの心理的な因子が付随してくるのが普通である。すなわち,真の薬の場合にも,“薬を用いる”という行動には,プラシーボー効果が伴うことになる。
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