Medical Topico 医学の話題
異型狭心症,他
Z
pp.46-47
発行日 1963年4月1日
Published Date 1963/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911905
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初老の男が激しい口論をしている間に,急に胸を押えてしゃがみこみ,苦しみ始める。外国映画にときどき出てくる狭心症発作の場面であるが,このように狭心症は激しい精神興奮や,肉体運動,たとえば坂道を登ったり,重い荷物を持ったりすると急に万力で胸をしめつけられるような,あるいは鋭いきりで胸を刺されるような痛みが現われるが,その誘因となったものが去ると痛みはとれる。またニトログリセリンや亜硝酸アミルなどの冠状動脈拡張剤を服用すると軽快する。この原因は冠状動脈の動脈硬化のために内腔が狭くなり,血流量が減少しているのに急に運動や興奮などで激しく心臓が働かなければならなくなっても,血流がそれに応じて増加しないために心筋への血液の供給,つまり酸素の供給が足りなくなり,それが痛みとして感じられるものである。
ところが数年前からこれと趣きをまったく異にする狭心症があることが注目されてきた。それは発作が運動などでは誘発されず,まったく誘因がないのに毎日だいたい一定の時刻になると自然に胸痛発作が起こる。何もしなくとも数分後には自然に消褪するが,それでは終わらずに15分間隔ぐらいに三回ぐらい連続して起きる。まったく定期便みたいに毎日規期正しくくるのであるから患者はたまらない。ニトログリセリンで痛みは消失するが,心電図では急性心筋硬塞のように発作の間中ST部分が上昇を続ける。多くの例ではそのうちに真の心筋硬塞症を起こしてしまう。
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