連載小説
胎動期〔6〕
十津川 光子
,
久米 宏一
pp.65-69
発行日 1960年7月15日
Published Date 1960/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911134
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抵抗の芽生え
留守の部屋へ侵入され,無断で日記や手紙が読まれている………これは,思春期と反抗期の入り混つた感受性の強い彼女らに衝撃を与えない筈はなかつた。
憤慨を言葉で表現できずにぽろぽろと涙を流す者,興奮のあまりノートや参考書まで破いてしまう者,大きな溜息をついて放心したように畳を見つめる者………看護婦社会の指導者には,子供を所有物化して人格も個性も認めない母親のように,偏狭で無智で低属な人種しかいないのだという失望は,彼女らにとつて歯ぎしりしたい程の口惜しさでもあつた。
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