連載小説
胎動期〔10〕
十津川 光子
,
久米 宏一
pp.57-61
発行日 1960年11月15日
Published Date 1960/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911204
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こうもり
9時に近い夜の外出は,春子が東京に出てから初めての経験だつた。
細い鉄柱の周りにぼんやりと立つている青年たち,外套の衿を立てて黙々と週間雑誌に目を落す人々,膝を組んでツンと背筋を立てている美しい女,春子にとつて電車の中のすべての乗客は異邦人のように寄りつき難いものがあつた。
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