医学の話題
トランキライザー
pp.20
発行日 1960年3月15日
Published Date 1960/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911054
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トランキライザー(静穏剤)はすでに発売されてから6年になり,その薬剤の種類も20をこし,アメリカでは抗生物質,ビタミンについで3番目にもつとも売られている薬でその額は年間630億円に達するという。如何に,現代の人々がこのような薬を欲しているかを示すのであるが,濫用の傾向がなきにしもあらずである。
今回の医学会総会のシンポジユウムの中に向精神作用薬についての討論がされたのは,時機を得ていたが臨床的なデーターはまだまだ経験に乏しく,薬理作用についても,従来の鎮静剤とどこが違うのか,まだ検討中なのである。大きくわければトランキライザーは6種にわけられるが,先ずインドで古くから使われていた蛇木から抽出したレセルピンが始めに現れ,次で特にフランスで合成,研究されたクロールプロマジンがあらわれた。この2つが,トランキライザーの代表であろう。もともと精神作用を鎮める薬であるからそれを客観化して,数値としてあらわすことは,むつかしいが色々な工夫がされている。シャム闘魚といつて2匹以上のオスを同じ水槽に入れると激しく闘争する金魚を用い,水槽水中に一定のトランキライザーを入れてその闘争力が鈍るのを観察し,客観化した研究もされている程である。
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