医学講座
催眠薬とトランキライザー
保刈 成男
1
1信大医学部薬理学教室
pp.78-81
発行日 1963年6月1日
Published Date 1963/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911959
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人類がこの地球上にあらわれてからこのかた,つねに幸福を求めてやまなかったが,得たものといえば,喜びよりもむしろ苦しみにしかすぎなかった。
苦しみが人体のメカニズム(機序)から生ずることを知らなかった原始人類は,はじめこれに抵抗を試みたが,じきに苦しみに反抗することが何の役にも立たないことを知り,それを受けいれる手段を考え,緩和しようと努力してきた。外敵との闘争にあけくれていた彼らにあっては,肉体的苦痛より逃避することが急務であったにちがいない。瞼をとじ眠ることが,その唯一の方法として行なわれたが,眠りをうるには肉体の苦痛と障害はあまりにも大きく,失われた眠りを回復するために神々に祈り,そのような薬を必死になって探し求めることになった。
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