教養講座 世界史の女性像・8
宗教改革・絶対主義の時代の女性たち
井上 一
1
1横浜市大
pp.49-51
発行日 1958年9月15日
Published Date 1958/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910691
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(Ⅰ)ドイツ,スイスの宗教改革
前の号でお話したルネッサンス運動はイタリーからはじまつて全ヨーロッパにひろがつて行きます。13世紀ごろからのヨーロッパの芸術作品がその前の幾世紀かのものと異つて,人間の生き生きした活動を描き出しているのは,この現われに他なりません。しかしオランダ,ドイツなど北ヨーロッパの芸術作品はイタリーの表面的に花やかなものにくらべ,何となく重苦しいものを感じさせます。そして大切なことは,ルネッサンスの標語ともいうべき》人間開放《ということが,北ヨーロッパの国々では,中世ヨーロッパを支配したローマ・カトリック教会の掟から人々を開放するという,いわば社会的な運動となつて現われたことだつたといえましよう。これを》宗教改革《と普通よんでいます。イタリーでも,前にお話したようにボッカチォという人はデカメロンという物語の中で坊さんたちが聖書の教えとかけはなれた生活をしていることを度々攻撃しています。又オランダ人のエラスムスという人も攻撃していますが,2人ともカトリック教会に反旗をひるがえす立場にまでは行きませんでした。この立場にはじめて立つた人がドイツ人のマルチン・ルッターという人でした。
彼は最初はやはり坊さんでドイツのウィッテンブルク大学の教授でした。
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