教養講座 世界史の女性像・9
絶対主義時代の女性たち
井上 一
1
1横浜市立大
pp.37-39
発行日 1958年10月15日
Published Date 1958/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910709
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
前の号でお話ししたイギリスのエリザベス1世が王位についたころのヨーロッパでは一般に絶対主義の時代と呼ばれています。16世紀から18世紀にかげて,ヨーロッパでは中世の花形であつた貴族が度重なる戦争その他の理由で力がなくなつて行き,それに代つて市民(ブルジョワ)とよばれる商工業者たちが富をたくわえて実力を養つて行きましたが,双方ともまだ十分な発展をしていなかつたのでヨーロッパのそれぞれの国の王室がこれらを操つて王権を拡大させました。この現象を絶対主義というのです。そしてこの代表がエリザベス治下のイギリスと,後にお話しするルイ14世治下のフランスであります。又前にもお話ししたようにこの頃は中世ヨーロッパを支配したローマ・カトリック教会に反対してプロテスタント教会(ルッター,カルヴインによりとなえられた)が生れ,この間で激しい争が生れ,流血の惨事までひきおこしました。この争の原因はただ宗教上の意見の相違ということばかりでなく,政治的なものも含まれています。ともあれ,以前ローマ帝国でキリスト教徒が迫害されたころの,異教徒によつて虐殺された信者の数を全部あわせても,キリスト教徒同志がキリストの名で殺し合つた数の方が多かつたといわれる程で,あまり名誉になるものではありません。この時代の歴史は上に申しましたように政治的なものが中心でしたから,どうしても王室中心にお話しして行かなくてはなりません。
Copyright © 1958, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.