教育の歴史・6
西洋絶対主義時代の教育
高倉 翔
1
1大阪学芸大学
pp.45-48
発行日 1964年10月1日
Published Date 1964/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905367
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西洋の絶対主義国家
先月号では,ルネッサンスと教育,宗教改革と教育について述べてみた。ルネッサンスと宗教改革以後の時期,つまり16世紀から18世紀ごろまでは,絶対主義の時代ともよばれる。絶対主義の時代は,中世の封建制度が崩れて近代市民国家が成立していく過程における,過渡的な時代であり,中世的要素と近代的要素を同時に内包している。15世紀ごろから,西欧諸国では,中世以来の封建制度を克服して,強大な王権が発達し,民族を単位とした中央集権的国家が成立していった。国王は,残存する中世的封建勢力を吸収するとともに,新しく抬頭してきた市民階級(商業資本家)の支持をえて,強力な権力と経済力を一手にし,軍隊と官僚制度を二大支柱として,まさしく《絶対》的な地位をきずいた。イギリスのエリザベス女王(1558〜1603)やフランスのルイ14世(1643〜1715)などは,典型的な絶対君主といわれる。絶対主義の時代とよばれるのは,以上のように,絶対的な権力をもった王制を中心とした政治・社会体制が持続した時期,つまり,16世紀の中ごろから,フランス革命(1789)の時期にいたる期間を意味する。絶対主義の時代には,絶対君主と商業資本家双方の利害にもとづいて,国家勢力の拡大と植民地支配権確立のために,はげしい国家間の競争(闘争)が展開された。
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