社会病理と精神衛生・9
新興宗教
高木 隆郎
1
1京都大学医学部精神科
pp.85-87
発行日 1964年5月1日
Published Date 1964/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912253
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1.戦後における新興宗教の激増
戦後の社会学的特徴をこれまでも,いろいろな角度から眺めてきたが,新興宗教あるいは既成宗教の分派の激増ぶりからとらえるのも興味あることである。たとえば,1945年,すなわち終戦の年には,わが国の宗派教団数は神道系14,仏教系28,キリスト教系2,諸派0といった具合で,戦時中の思想言論の統制により,天照皇大神ないしは“天皇教”に妥協しないものは弾圧をうけ,ある教祖達は“思想犯”として巣鴨に投獄されたりした。ところが,第1図にしめすようにそれらの教団数は1950年(昭25年)までうなぎ昇りに増加し,600を越え,翌1951年には700にも達したというが,1952年,宗教法人法による新宗教法人への認証事務切替えが行なわれたため,その後だいたい整理され,現在約400あまりで教団数としてはまず著明な変化はみていない。
ここでは,便宜的に新興宗教ということばを使用したが,たとえば,戦後なり,明治以後なり,神仏の啓示をうけて文字通り新興の教祖によってできあがった宗教は比較的少なく,大部分は何らかの形で既成宗教の系統をひくものである。
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