教養講座 世界史の女性像・7
ルネッサンス時代の女性たち
井上 一
1
1横浜市大
pp.53-55
発行日 1958年8月15日
Published Date 1958/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910669
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前の号では,14, 15世紀ごろから現在のヨーロッパ諸国の基礎がだんだんに出来てきたことをお話しました。この時代の社会のささえが,強大な王室と富裕な市民(ブルジョワ)であつたという点で,ヨーロッパに,貴族(騎士)中心の中世とちがう新らしい時期,つまり近世とよばれる時代がはじまります。しかしこのような近世の特徴は小規模ではありますが,もう少し早くからイタリーに生れています。
前にお話しした十字軍はイスラム教従に対するヨーロッパのキリスト教徒の聖戦であつたのですが,当時はイスラム教徒の文化の方がヨーロッパ文化よりずつと高かつたので,ヨーロッパ人は,これに関心を向けずにはいませんでした。そしてイタリーは他のヨーロッパ諸国とちがつて,商工業の中心となるべき都市の伝統もローマ帝国時代から残つていましたし,地理的にもヨーロッパとイスラム教圏との中間にあつたので,十字軍はイタリーの都市に住む商人に活躍のチヤンスを与えてやつたようなものでした。紀元1202年に行われた第4回十字軍はイタリーのヴェニスの町から出発しましたが,この町のたのみで商売敵のコンスタンチノープル(今のイスタンブール)の町を占領して,イスラム教徒に占領された,キリストのお墓のあるエルサレムの奪回という目的はどこかに行つてしまつた程でした。
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