随筆 世界史の女性像・1
ギリシヤの女たち
井上 一
1
1横浜市大
pp.41-43
発行日 1958年2月15日
Published Date 1958/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910537
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女の平和
4年ばかり前,俳優座劇団が《女の平和》という劇を上演したことがあります(これはマルチーヌ・キャロルが主演して映画にもなりました)。この劇は今から約2300年前のギリシャ人でアリストフアネスという人(紀元前445年生れ,同385年没)が作つたもので(紀元前411初演)劇の大体の背景を申しますと,当時のギリシヤは今のように一つの国に統一されていないで200以上の町がそれぞれ独立した国(都市国家)であり,アリストフアネスの生れたアテネ(現在のギリシヤの首府)という国と南のスパルタという国とが対立して,ギリシヤの殆んど全部の国がこの二つの下についてたがいに戦つておりました(ペロポネソス戦争)。アストアリアネスはギリシヤ人同志が戦争しあう愚を嘆き,この劇を書いて戦争反対を表明したのです。内容はアテネの夫人リユシストラテー(戦争放棄という意味)が,男が政治を行うかぎりこの戦争は終らないと考えてギリシヤ全国の女の代表を召集し,男たちがたがいの戦争をやめるまで夫たちとの同棲を拒否する決議を行い,これが実行に移されたため,男たちは同棲を許してもらうために戦争をやめてギリシャに平和が生れるという筋になつています。
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