講座
ナースのための医学概論—現代医学は如何に成長して来たか?
藤本 省一
1
1京都第一日赤病院
pp.68-73
発行日 1957年5月15日
Published Date 1957/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910362
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歴史の正しい考え方と正しい見方
(1)歴史の考え方
今日の医学がどう云う風に出来上つたか? 此れは歴史の専門家の問題であり,医学史として立派な一つの科学をなしている。我々が医学概論の中で了解しておかねばならぬ問題は詳細なる断片的歴史的事実の探求ではなく,今日非常に優秀なる科学にまで医学が発展して来たその歴史的な経過とそれを推進した時代的な背影であり,それと同時に将来医学が如何にあらねばならぬかと云うことである。現在を知るために過去が必要であり,現在は未来をより美しく建設するために役立たねばならぬ。医学についても全く此れと同じことが云える。これは又歴史を学ぶ基本的態度である。次に歴史の中には多くの英雄があり,立派なる仕事をした科学者がある。過去の歴史では多くの発明や発見について個人の名誉と光栄をあまり鼓張した傾向はなかつたであろうか? 例えばたしかにある科学者がラヂオを発明しテレビーを造つてくれた。そしで此れ等の科学者が我々の生活にもたらした幸福は実に偉大であり無限である。しかし此の偉大にして無限なる幸福ははたして発明者個人のもたらした物であろうか?一つの事が成功するまでに花は咲かなかつたけれどもその仕事の礎石となつた無数の科学者の努力と研究があることを忘れてはならない。一個人がなした発明や発見も云わば無数の無名科学者の仕事を綜合して最後の仕上げをしたに過ぎぬと考えることが出来る。
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