時の動き
イギリスの水爆実験/転機に立つNATO
奥山 益郞
1
1朝日新聞
pp.44-45
発行日 1957年5月15日
Published Date 1957/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910356
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南太平洋のクリスマス島でイギリスが水爆の実験をする。クリスマス島はハワイの南方2500キロ,赤道に近い島で,3月1日から7月までの5カ月間,この海域で実験をするというのだ。日本からは7000キロ以上も離れており,ビキニの場合よりも遠いが,といつて安閑としているわけにはいきそうもない。政府もこれまで,イギリス政府に対して,3度の申入れをして,実験中止を希望したがイギリス政府は予定を変更しそうにない。このため日本からは実験阻止の抗議船団を出そうという話もある。また政府は宗教代表を派遣して,やんわりと攻める手も考えている。しかし,イギリスの立場は「高空爆発をやるから絶対安全だ」の一本ヤリで,「実験をやるのは当然の権利」と主張している。
日本にとつてはビキニの苦い経験があるし,実際クリスマス島上空の気流は3000メートル上層では東風となつている。クリスマス島の死の灰が東風に乗つて西へ移り,そこから日本を襲うことは十分考えられる。イギリスが本当に無害な実験と考えているのなら,ロンドンの上空でやつたらいいだろうと言いたくもなる。
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