特集 ナースのための精神身体医学
ナースの立場から見た精神身体医学の解釈
藤本 省一
1
1京都第一赤十字看護学院
pp.153-156
発行日 1954年10月15日
Published Date 1954/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909675
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まえがき
戦後日本の医学雑誌には精神身体医学という言葉が頻繁に取扱われている。これはアメリカ医学の新傾向の一つであり,医学からみれば一つの進歩である。これは内科外科という様な従来の意味の專門分科ではなく臨床医学の各科に共通の一つの原理であると同時に,医学の考え方について重要な基本的な意味をもつている。又医学と医術が如何にあらねばならぬかを考える医学概論の内容に通じており,医療に従事するものにとつては単に理論的興味にとどまるべき物でなく,むしろ日常実際の医療行為を通じて実行して行かねばならぬ内容である。
医療に従事するものの中で患者と接触することが最も多く患者から最も親しまれ,患者に対する影響の最も多いナースの諸姉にとつては特に関係が深く,且つ今日まで漠然と要求されていた「何故我々は患者に懇切丁寧でなければならぬかの問題について科学的な一つの理論を示?」している。従つて広義に解釈された精神身体医学は実は医者やナースの修養の問題であるからこれについての正確なる理解が望ましい。又患者に対する言葉使い,服装,態度その他我々の言行の一つ一つは患者の情緒に作用し,この心理的因子は肉体的症状の原因になることが理解されて,始めて他分野の科学者と異る医学の尊い使命を把握することができる。この方面からナースの仕事が如何に考えられねばならぬかについて私の考え方を記載してみるつもりである。
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