教養講座 小説の話・10
永井荷風と谷崎潤一郎
原 誠
pp.46-49
発行日 1957年5月15日
Published Date 1957/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910357
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
さきごろ,「つゆのあとさき」が映画になり,最近では「踊子」が映画化されましたので,永井荷風の作風については,すでに御存知の方が多いと思います。
荷風は現在,千葉県の市川市管野に住み,近所では誰知らぬ者のない,変人でとおつています。ガン固で,ケチンボで,イヤらしい爺さん—。そして文壇でも,人ずきあいが悪く,誰もよせつけないし,扉を固くとざして時代の新風を迎えようとしない,狷介固陋の老大家とされています。その荷風も,しかし,かつては明治文壇のはなやかな新風だつたのです。
Copyright © 1957, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.