名詩鑑賞
そぞろあるき—アルチュール・ランボオ 永井荷風譯
長谷川 泉
pp.48-49
発行日 1951年9月15日
Published Date 1951/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906931
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アルチュール・ランボオはフランス象徴派の詩人の中でも特に數奇をきわめた詩人である。彼は若くして天才の稱をほしいままにした。「俺は十二の時,閉じこめられた屋根裏の部屋で,世間を知つた。人間喜劇を圖解した。酒倉で歴史を覺えた」という「飾畫」(イルミナシオン)の言葉はそれを物語つて餘りある。小林秀雄の名文「ランボオ論」の言葉を借りるならば,15歳にして天才の表現を獲得してから,18歳で身自らその美神を絞殺するにいたるまでの三年間の期間に彼の怪物的早熟性が残した2500行の詩とほぼ同量の散文詩が,今日19世紀のフランス詞華集に無類の寶玉を與えているのである。
「酩酊船」の名調子に感激したベルレーヌは「偉大なる魂,疾く來れ」とランボオをパリーに招いた。「流竄の天使」とベルレーヌのよぶランボオはたちまち彼を魅了し,2人はロンドンやべルギーを放浪した。ベルレーヌは妻君をおきざりにして。
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