Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
永井荷風の『断腸亭日乗』―多病息災の人生
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.198
発行日 2007年2月10日
Published Date 2007/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100476
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『断腸亭日乗』(岩波書店)は大正6年9月,永井荷風が39歳の時から昭和34年に亡くなる直前まで40年以上にわたって書かれた日記文学であるが,そこには病弱だった荷風のさまざまな症状や病気に対する対応が記されている.
例えば,日記開始後間もない大正6年9月20日には,「昨日散歩したるが故にや今朝腹具合よろしからず.午下木挽町の陋屋に赴き大石国手の来診を待つ.そもそもこの陋屋は大石君大久保の家までは路遠く往診しかぬることもある由につき,病勢急変の折診察を受けんがために借りたるなり」とあって,荷風の消化器症状とともに,主治医の往診の便宜を考えて住居を決めたという事情が書かれている.今後,荷風の生活スタイルが病気によって規定されることを示唆する象徴的な記載である.
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