ナースの作文
帰省/無題/思い
加畑 節子
1
,
木村 奈美子
2
,
木元 一恵
3
1福井県立高等看護学院
2北海道室蘭市市立室蘭病院
3堺脳病院
pp.45-47
発行日 1957年3月15日
Published Date 1957/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910302
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
弟がさつきから,姉ちやんまだかまだかと,台所を出たり入つたりして,私の作つているカレーライスに待ちきれない顔をしている。もうすぐ出来ますからそれ迄暫く我慢してねと言うと情けない様な眼で私を眺め,しぶしぶ出て行く姿を見ると小学六年だと言うのに無性に,小さく可愛く見えて早く作つてあげねばと気を急がす。
私は多くて月に二回帰省する事にしているがその日の夜は必ずカレーライスを作る事になつている。何故ならカレー一家と言つていいくらい皆んなが好きな事と歓迎の馳走と言う意味で自然にそれが習慣になつてしまつた。勿論それには,私の腕自慢の料理である事も大いに関係するのであるが。だから弟は私の帰省を何よりも心待にしているらしい。ようやく仕度が出来親子五人がカレーライスの食卓を囲んだのは日も暮れた6時半である。久しぶりで顔を合せて家庭と云うやわらかい雰囲気に満足しながら賑に食べ始めた。私の話に花を咲かせている内に突然弟が“今日のライスカレー肉が入つてえんのや”と云い出した。兄もそれに気が付いていたと見えて“どうも味がおかしいと思つたよ”と早速同意する。弟がなあーんだと云わんばかりの顔をしたので妹が横から“今日は野菜のカレーライスやの”と助け舟を出してくれた。そこで私が今日のは野菜だけど肉と同じ様な味も付けてあるし栄養もあるんですからと弁解する。実は非常に急ぐ事があつたので肉の事すつかり忘れてしまつた。家へ帰つても田舎の事だから買うにも肉がない。
Copyright © 1957, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.