今月におくる言葉
尊い思い
pp.5
発行日 1954年7月10日
Published Date 1954/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200763
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子供の頃からその爽快さをきかされ,股近又盛んにすすめられていたのに,とんと機会を惠まれていなかつた宿望の保津川下りを,フトしたチャンスに味うことができ,自然美をたたえ,スリルをたのしみ,船頭の妙技に驚嘆し乍ら,またたくまに2時間の行程を下つた壮快さを,まざまざと憶いおこしてみる.
15人ばかりの乗船客はそれぞれ思い思いのみかたで,小さな船の急瀬をいくスリルを味つていたもののようで,カメラをかまえてはスナツプをとるもの,奇声を発する女学生,16ミリに次々とおさめこむ外国人など,結構にぎやかなことであった.私は大そう幸運にも最もヘサキに近い最前列に席が与えられ,何のさえぎるものもなく,しゆん間的に変る風物をたのしんでいた.が,フト眼の前の2人の船頭のうごきに注意をよせてみたら,これ又あたりの景色以上に素晴しいものであることを発見した.
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