講座
病院のサービス
橋本 寬敏
1
1聖路加病院
pp.16-18
発行日 1956年12月15日
Published Date 1956/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910247
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サービスとは報いを望まないで人のために親切をつくすことである。それで病院では昔風の病院だろうが近代型の病院だろうがサービスをするのは当然のことである。近年医学が進歩し,病院の規模が大きくなるにつれて,だんだん病院の働きが,経済主義,物質主義に傾いて,不親切,不人情になるという,そしりがある。病院に勤務する人々は医師だろうと看護婦だろうと事務員だろうと,やはり親切,同情を以つて,病人も家族も取扱うように心がけなければならない。
ところが今日病院管理について話す時に,サービスというのは前述のような意味のサービス(奉仕)ではない。これは病院の医療,看護,給食,事務等以外の仕事で,入院した患者を居心地よくさせ,安全を期するための働きをいうのである。患者から注文されなくとも病院の側でしてやるという意味でサービスと言つたのだろうが,あまり適切な術語ではない。私は仮りに『舞台裏活動』と言つている。即ち熱,光,動力の供給,冷蔵,洗濯,清掃などをいうのである。医学の知識が全くない技師,その他の職員雇員でもできる病院の業務であるが,医師や看護婦が病室,手術場などの舞台でよい病院医療を実演するのにはなくてはならない舞台裏の業務なのである。従来の日本の病院ではこの方面は全く忘れられているので,今後新らしい型の病院とするにはこの方面で手をつけなければならないことが多い。
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