辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論
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真柴 裕人
1
Hiroto MASHIBA
1
1鳥取大学医学部附属病院
pp.950
発行日 1990年11月1日
Published Date 1990/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900774
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数ケ月前のことであった.旧知のA氏から面会を求められた.A氏夫人の妹が入院中であり,その予後は不良といわれていた.A氏曰く,「近々,ヨーロッパに視察旅行に行く予定があり,妻を同行したい.旅行中の万一の事態発生の予測は如何であろうか」と.
当該診療科の科長を呼んで,説明してもらった.科長の話では,正確な時期を述べることは不可能であるが,可能性は多分にあるとのことであった.そこでA氏夫人は旅行を断念した.ところが患者は低空飛行ながら約2ケ月経過し,遂に死亡した.A氏夫人は妹の看病疲れと旅行が出来なかった後悔とをA氏に向けたらしい.複雑な心境を訴えるA氏に対して,私は,患者さんは素晴らしい生命力の持主であったと説明した.更に,最近の医学・医療の目覚ましい進歩についても付け加えた.私の説明でA氏は納得されたが,A氏夫人はなかなか得心がゆかない様であった.
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