ナースの作文
梅雨晴れに,他
田辺 良
1
1大阪阿武山赤十字病院
pp.72-81
発行日 1956年10月15日
Published Date 1956/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910199
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梅雨晴れの麗かな日差の中で,私は色々と思い患つている。「患つて」とは私の場合二つの事からの意味で,私は文字通り患つて,ベットに臥しており,胸中でも何かと思い患つていて,これでは二重の患いが私を圧する様ですが,案外本人はサジスト的気分を,味わつていると云つたなら変でしようか—
看護の道に入つて6年,この職に在る人にとつて6年間は決して永いものではありません。云わば駈けだし時代とでも申しましようか,もともと私の場合敗戦の翌年に厚生女学部に籍を置き,この頃逼迫した食糧事情に,食欲多感な年令が屈伏せずに,学院主事の注告も何のそのと,逃げ帰えりその頃の事で,300円幾等かの奨学金を返済しておりますが,又この6年間に2年患つて入院しておれば,後に残るのは僅かの事で免状の手前,誠に気恥かしい気持が隱くせません,と云うより身弱が寂し過ぎる。
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