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或る看護の症例について
岩佐 潔
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1病院管理研修所
pp.154-155
発行日 1955年4月15日
Published Date 1955/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909811
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世の中には色々な難しい問題が有るけれどもそれ等は結局の所人と人との人間関係の難しさに原因していることが多い。患者と看護婦の関係は病人と世話人との技術的関係であるけれどもそその中にも色々な人間関係を含んでいる。それは男と女或は女同志の関係であつたり,病人と健康者,休んでいる者と労働している者,更には主人と奉仕者又は逆に来者と主人,要救助者と救助を与える者,弱者と強者,被支配者と統治者,その他友人関係,戀愛関係,同盟関係,協力関係,憎悪関係,敵対関係等々と限りがない。更に患者集団と看護婦集団とを考慮に入れるならばそれは個と組織体との関係であつたり逆に多数者に対する個の関係であつたり更に看護婦集団内の人間関係と相俟て益々複雑な難しいものとなる。
いつぞや本誌に医者が看護婦に向つておい君と呼びかけ又は名前を呼び捨ててずい分ぞんざいな言葉使いをするという実例が挙つていたけれども患者に対する看護婦の言葉使いの中にもよくこれと似た例を聞くことがある。年齢的にも社会的にもその知見,教養から言つても遙に優れている患者に向つてずい分ぞんざいな言葉使いが平気でなされている。しかし御座居ます調の余り丁寧な言葉を使うのも仕事の能率上面白くない事でありまして患者の社会的地位に応じて言葉を使いわけると言うのも不都合なことであるから,言葉使いと言つた一見簡単な様な問題でその解決となるとなかなか難しい。
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