教養講座 小説の話・12
有島武郎の「或る女」
原 誠
pp.48-52
発行日 1957年7月15日
Published Date 1957/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910393
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有島武郎の名は,今の若い人たちのあいだでどれだけ知れているでしようか?
俳優森雅之のオヤジだ,くらいしか知らない人,或いはせいぜい大正時代の二流三流の小説家だ,くらいにしか考えていない人が多いかもしれません。これはとんでもないことです。文学史の上でも,それから今の批評家たちのあいだでも,有島武郎のことをそれほど重くみない人が多いようですが,これもとんでもない。彼の長編「或る女」は,わが国の近代文学のすばらしいデンクマールなのです。明治,大正,昭和のいろいろな文学作品の中から最もすぐれているものを選び出せといわれたら,私は躊躇なく「或る女」をその一つにあげましよう。
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