特集 戦後十年最近の医学と看護はどう変つたか?
肺結核治療の進歩
加納 保之
,
井槌 六郎
pp.27-31
発行日 1955年10月15日
Published Date 1955/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909926
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.まえがき
1944年11月20日米国のミネソタ州の或るサナトリウムに於て,肺結核に罹患した21歳の少女に対して人類最初のストレプトマイシン(以下SMと省略)治療が開始された。斯くて之の日は結核の治療に革命的な変更をもたらした記念すべき日となつたのである。
従来肺結核の治療は新鮮な空気及び豊富な栄養等に注意しつつ安静を維持することによつて,結核個体の自然治癒能力の増進をはかると云う消極的な治療法を土台とし,積極的治療法としては人工気胸術,胸廓成形術等の虚脱療法が最も確実性のある治療法として採用されて来た。しかしSMの発見にひき続き,1946年にパラアミノサルチル酸(PAS),さらに同年チオセミカルバゾーン(TB1),その後少しく経た1952年にイソニコチン酸ヒドラジッド(INH)等の一連の有力な抗結核剤が出現したことは,結核治療の面目を一新させてしまい,新らしい時代に入つたのである。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.