特集 皮膚泌尿器科診療の進歩
腎・膀胱結核の治療の進歩
大越 正秋
1
1関東逓信病院泌尿器科
pp.825-835
発行日 1954年12月1日
Published Date 1954/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201334
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腎結核の治療の進歩のあとをふりかえつてみると,先ずその第1歩は1869年Simonにより腎というものは剔除可能であり残つた腎で生命を維持できるということが証明されたことに始り,前世紀末迄に結核腎の剔除が201例について行われた。しかしこの時代は診断法及び手術法が発達していなかつたため未だ行われることが少なく,その結果もよくなかつた。 1914年Rowntree等により逆行性腎盂撮影法が完成された以後は確実に診断が下されるようになり,かつ手術法も進歩し,この頃から盛んに結核腎の剔除が行われるようになつた。それから30〜40年の間は腎結核と診断がつけば直ちに手術を施行する原則て治療が行われていたのであるが,1940年前後頃から待機的手術ということが一部の人(Fey,de Beaufond等)により唱えられ始めていた処,1944年のストレプトマイシンの発見以後の化学療法の進歩によりこの傾向は一層一般的の原則となつてきた。
かくて化学療法剤の出現により,従来の治療方針に大きな変革が起り,これら藥剤と手術と,いずれを選択するか,またその組合せを如何にすべきかという事が1950年前後の大問題となり,種々試みられ花々しく論文が発表されたが,現在では一応落付くべき処に落付き,それらの結果を見守つているという状態となり,ここ1,2年間には特別の進歩或は変革というべきものはない。
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