特集 戦後十年最近の医学と看護はどう変つたか?
看護の基本的なものの考え方
滝沢 春枝
pp.22-26
発行日 1955年10月15日
Published Date 1955/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909925
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与えられたこの題を,どの様に書きあらわせるのか「大変なものを引受けたこと」と私思いの友人は心配してくれた。それもその筈で私のような浅学なものが,このむづかしそうな問いに対するお答えが果して出来るか,編集の方に一考を願つたのだけれど……永い経験を通したら何か書ける筈だとの手いたい命令にとうとうお約束をしてしまつたものの,期日が迫つても一向に心の奧にひそんでいるものが一寸もペンにつたわらない。戦争が二つの世代を作り上げたとすると,私はいわゆる戦前派の人間でそれも,国の内も外も平和な何となく豊かな文化的行動の著しい進歩が見られた昭和の初めに,既に看護婦の一員として末席を温めていたのだから,二昔もの古い存在となつてしまつた。永いというだけで…この期間を通して最近身近かに起つた色々な事柄からも,一体看護の仕事とは何が基本であり,どう考えるのが正しいのか分らなくなる時がしばしばで其の度に,足許がグラツク様なたよりなさを感じる自分を見出し,こんな時に皮肉にも,この様なことについて書くチャンスを与えられたことはむしろ私自身への反省でもあるし,又多くの先輩,気鋭あふれる若い方達にも共々にお考えいただけることと信じ,私の思う看護の基本的なものの考え方について書かせていただく。
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