講座
肺結核外科療法の予後
加納 保之
1
1慶応大学医学部
pp.6-11
発行日 1953年8月10日
Published Date 1953/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200564
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諸言
ストレプトマイシン,PASなどの化学療法剤の発見は,幾多の問題を派生しながらも結核の治療方法およびその結果に大きな影響を与えた.およそ1910年このかた肺結核の外科療法研究に関する黄金時代を出現し,胸成術をはじめ,肺剥離術,横隔膜神経麻痺術,肋膜充填術などのいわゆる肺虚脱療法および空洞吸引術,空洞切開術,肺切除術,肺葉切除術,最近においては肺区域切除術およびその他の部分的切除術などの直達療法へ発展してきた.この間ストレプトマイシン,ペニシリン等の応用により,手術合併症の発生がいちぢるしく低下するとともに,從来,不可能に近いほど困難であつた手術的療法を可能にし,また新しい着想も生れ,その治療成績も一変するに至つた.その2,3の例を擧げると,ペニシリン使用前における外科療法においては手術創の化膿に惱んだものであり,その割合は最低10%を下ることはなく,半数に近い化膿をみた報告もあり,胸成術の如き場合の化膿は当然患者の運命を左右するのであるから,その寄与は大きいのである.
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