特集 結核—治療の進歩と保健活動
結核発病の最近の様相と結核治療の進歩
青木 正和
1
1結核予防会結核研究所
pp.964-968
発行日 1988年11月10日
Published Date 1988/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207634
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根絶には程遠い結核
昭和40年代に入ってから,わが国の結核まん延状況は著しく改善してきたので,いまでは結核は過去の病気と考える人も少なくない。しかし,①いまでも1年間に56,496人(1987年)もの結核患者が新たに登録され,11万人を超える患者が現在治療を行っている。②世界のなかでみるとわが国の結核まん延状況は先進国のなかでは最下位であり,結核が最も少ないオランダやスカンジナビア諸国に比べると25年も遅れている。そのうえ,③結核減少の速度は図1にみるように1977年以後遅くなっており,とりわけ39歳以下の若年層の結核の減り方が遅くなっている。
「結核の根絶」を文字どおり「わが国から結核患者が1人もいなくなること」とすれば,わが国の結核根絶は100年先でも達成できないだろう。最近,「塗抹陽性肺結核患者の発生が年間100万人に1人以下」になれば一応根絶といってよいという考え方が出されているが,この定義の根絶に達するのでも2050年頃と推定されている。結核はまだまだなくならないのである。
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