講座
教育心理学(3)—教育の段階の発達的基礎
石山 脩平
1
1東京教育大
pp.22-26
発行日 1954年10月15日
Published Date 1954/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909652
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1.発達段階に応じて目標と内容を
夏休みの宿題に昆虫採集を熱心にやつてきた小学校4年生の子供を,よくやつたといつてほめるのはよい。休みが終つてからも秋の昆虫の観察や採集を続けたり,辞典や参考書によつて昆虫をしらべることを奬勵するのもよいであろう。しかしその場合に,天下の昆虫学者になつたかのようにうぬぼれさせてはいけないし.まして昆虫にばかり夢中になつてほかの勉強を平気でなまけるような態度をゆるしたりしては,もつてのほかである。小学校はけつして専門の学者をつくる段階ではなくて,基礎的な一般陶冶(初等普通教育)を施す段階だからである。
大学へ入学して2年も3年もたつのに,まだ生涯の方向がきまらず,のんきにあるいはあせつて,あちらこちらの方向をさすらい,自分の身を托すべき中心的な興味がつかめないという風では困つたものである。その頃は正常な発達段階においては,専門的職業的陶冶をうけることを自ら要求もし,またそれが可能な時期だからである。
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