講座
血液銀行のはたらき/採血保存について
河崎 藤重郞
1
1日本赤十字社輸血研究所血液銀行部管理部
pp.27-30
発行日 1954年10月15日
Published Date 1954/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909653
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血液銀行とは
我々が月々少額ずつでも冗費を節約して預金をしておけば不慮の出費を必要とするとき,知人の間を馳けずり廻つて借り歩かなくとも,自分の預金を引出すことが出来るし,又自分の預金以上に多額の金を必要とする場合でも,信用さえあれば,銀行から,一時融通を受けることができ,安心して,社会生活を営むことができるこれが,従来の銀行というものの常識的な観念である血液銀行も,全くこれと同じ考え方の上に立つているものであつてただ金銭と血液との相違だけである。
即ち健康な多数の人々がほんの少量ずつでも,自分の血液を預けておけば,自分や家族などで急に給血の必要が起つた場合,時には預けた血液の量以上のものが,治療上どうしても必要な場合にも,ただちに給血用として,安全な血液の供給が受けられ,血液が間に合わないためにたすけられる命を失うということが少なくない。ただお金の場合と異つて血液の性質は一人々々必ずしも同様ではないので,従来は給血にあたつて,病院では非常な苦心をしていたにかかわらず,充分に治療目的を達することができない場合も屡々であるだけでなく,思わない不幸を招いた例も少くなく,幾度か,新聞や放送等にも取上げられているのである。
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