講座
教育心理学の基礎
安藤 堯雄
1
1東京教育大学
pp.10-13
発行日 1952年9月10日
Published Date 1952/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200350
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教育ということがらは,複雑なものであるから,さまざまの学問の力をかりなければ,究明されない。少なくとも,哲学,心理学,社会学の研究方法をかりる必要がある。これは教育哲学,教育心理学,教育社会学といわれるものである。教育は,人生の目的に関係するから,それは哲学の研究対象となる。例えば,現在,教育において中心となつている民主主義は,哲学の問題である。つぎに,教育は,社会の出来事であり,社会との関係をはなれて教育は考えられない。そこで,教育と社会との関係,社会における教育の任務などの問題が研究されなければならない。これは,教育社会学の中心問題である。
さて,教育心理学においては,どのような問題がとりあげられるであろうか。教育はいつでも人間を対象とするものである。人間を個人とし,それ自身の立場からみる場合でも,人間を,社会の一員,社会の後継者としてみる場合でも,教育は,「人間」を対象とするものである。また,教育というとき,教育者と被教育者,教師と生徒との人間関係が問題となる。教育は人間を対象とするものであり,教育は,人間関係である。ところで,心理学は,人間の学問であるといわれるものである。そこで,教育を心理学的に研究しようとする教育心理学は,第一に,教育の対象である。
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