講座
教育心理學—その1—序論
石山 脩平
1
1東京教育大学
pp.32-35
発行日 1954年8月15日
Published Date 1954/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909617
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1.教育心理学の対象
—ここでは何を問題とするか—
教育心理学は,教育というはたらきを,よりよく実踐するために必要な心理的基礎を研究する学問である。教育というはたらきは,学校の教師はもちろん,家庭の父母も,職場の先輩も,一般社会のひとびとも,何らかの形と程度とにおいて,つねに実行しているのであるが,それは果して合理的に有効におこなわれているであろうか。たとえば,もともとできもしないはずのことを,無理にやろうとして,ムダな骨折りをしてはいないだろうか。ちよつと気をつけさえすれば,らくらくとでき,効果もあがるのに,そこの心づかいがたりないために,まとをはずれたり,はがゆさ物足りなさを感ずるといつたようなことがないであろうか。勉強ぎらいで,なまけてばかりいる子どもを,何とかして勉強のすきな子どもにするコツはないだろうか。ひどくふさぎこんだり,ことごとに反抗したりする子どもを,むやみにおだてたり叱つたりしないで,もつと相手の内心に立ちいつて,何がかれらをそうさせるのか,どうしたら,あかるく,すなおな態度にならせることができるかを,きわめることはできないだろうか。
およそこうした問題が,教育上でぶつかる問題で,しかも,とりわけ心理学的に解明すべき問題である。これこそ教育心理学の対象にほかならない。問題は,このほかにも無限に見出されるであろう。
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